『美徳のよろめき 三島 由紀夫』で何がよろめいたのか気になる

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*「晴耕雨読その他いろいろ」(2021/1/29)投稿記事の修正転載です

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「美徳のよろめき 三島 由紀夫」で何がよろめいたのか気になる(2021/1/29)

ストーリーが有閑不倫物語でテーマがよろめき。僕が勝手に考える文学ってのは人間を言語で表す、だ。表したい事こそがテーマ。テーマを効果的に表すのが重要でありストーリーはそのための舞台装置に過ぎない。

この小説で最も印象に残ったのが「私を愛していなかったのでは?」と疑問を示すシーンだ。想いも思考もよろめく。この前後は全て綿密に計算された場面設定に過ぎないとすら思えた。

不倫ってのは難しい。ダメなんだけど、じゃあなんでダメなの? と問われれば答えに窮する。実質的な問題は財産相続だろう。誰が誰の子かわからなくなり、何人子供がいるのか不明なら、財産を分けようがない。昔はもちろん今でも大きな問題だ。

じゃあ共産主義なら? 子供は社会全体で育てるってシステムが世界中に普及したら? 今の僕らにとっては何か嫌だがそれが常識となれば問題ないかも。それでもやっぱり不倫はダメだろう。愛とかそういう問題、もっと言ってしまえば独占欲の問題だ。

自由に恋愛したいって気持ちと相手を独占したいって気持ちは同じ部分に根差してるんじゃね? 多分それは表裏一体でありながら両立できない。だから社会の安定につながる独占欲の方に軍配が上がり、不倫は認められない。そんなところではないでしょうか。

じゃあなんでよろめくか? 抽象的に言えば官能の素質だろうが好奇心な気がする。それを押しとどめる力は慎み、言い換えれば社会常識だ。つまり美徳は慎みであり、それが官能のせいでよろめく。……と僕は最初そう考えた。

でも逆も気になる。官能こそ美徳であり、それをよろめかせるのが慎みでは。いやいや、違うでしょ。違うとは思いつつ恋愛以外では成り立ちそう。常識が美徳、好奇心でよろめく。好奇心が美徳、常識でよろめく。時と場合によりどちらもOKじゃね?

だから僕は気になる。一体よろめいたのは何だろうか? いずれにせよこの問題は人間のギリギリのところを攻めている。生物的に考えたらどちらにもメリットがありそう。相手を独占すれば自分の遺伝子を優れた相手と共に確実に残せる。自由恋愛なら多様性が増しいざという時に絶滅を免れる。

ひょっとしたら本能的には影響を受けているのかもだけど、人間はこれらのメリットとは別のところで相手を独占したがり、同時に自由恋愛を求めているのでは。そういうのって凄く人間っぽい。

動物にもそういう感情はあるだろうから人間にだけあるとは言わないが、そんな動物の姿を目にしたら人間っぽいなぁ、と思うに違いない。

などなど、とりとめもなく色々と考えてしまいました。不倫の話は難しいので自分の中でも当分まとまらなさそう。想像を掻き立てられるとても面白い小説でした。

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