好き勝手感
テーマが奇病でストーリーがダークファンタジー、キャラクターが奇病に翻弄される人たち。中二病世界の設定資料集を呼んでいるようなワクワク感がたまらない。好き勝手書きました感が凄い。これにOKを出した出版社も凄い。

AIには真似できない
文章が凄い、と思ったらもともと短歌の人っぽい。選びに選んだみたいな切れ味の単語でガンガン刺してくる。ぶっちゃけ選び過ぎてて逆に読みにくいんじゃね?ってところも多い。そんな違和感の峰の上を歩くような感覚が面白い。
短歌といえば僕的には『みだれ髪 与謝野 晶子』。……すいません。全然知らない素人です。それにしたって「その子二十歳」は衝撃。違和感どころの話じゃなく、ただただ唖然とするばかり。三十一文字しかないわけだから、言葉選びの鋭さも納得ですな。

かと思えばそんな緊張感ばっかりの世界でもない。以前読んだ『星を見た金魚 高橋 洋子』は短歌よりも短い俳句+面白旅行記だったけど、もっと肩の力が抜けていた。なので分野がどうのこうのってだけでもなく、本人の性格の方が出るのかも。

『奇病庭園 』は文章だけでなく、お話自体も独特。一部の人に刺さる反面、一般受けはガン無視している、と思う。だって設定ばっかりで何も起こんないし、何か始まったと思ったらいつの間にか終わってるし。唯一お話みたいなのがある部分も解決した感は薄い。
『はてしない物語 ミヒャエル・エンデ』をダークにして、繋がりを曖昧にした印象を受ける。「けれども、それはまた別の物語、いつかまた別のときに話すことにしよう」を、ゆるい繋がりで並べたような感じ。特に最初の頃は霧の中を歩いてるみたいな気分になります。
僕は最近AI小説に興味あるんだけど、こういう話って逆に凄いと思う。AIに相談したら弾かれる可能性が高い。文章もそうだし、構成もそう。ある程度抽象的なままで敢えて形にして、ワクワクゾクゾクするようなお話に仕上げることは、おそらくAIには真似できない。
リアル奇病?
その他、個人的に気になったこととしては奇病がある。角が生えてきたり、鱗が出てきたり、翼が生えて飛んで行ってしまったり。なんともダークファンタジー的で不気味な面白さがある。実際に世の中には色々な奇病があるだろう。そのうちのひとつが大流行して人類は滅亡していくのかも。
身近で奇病的なものとしてパッと思い浮かぶのは「海馬回旋遅滞症」。これは『ADHDコンプレックスのための”脳番地トレーニング” 加藤 俊徳』他、加藤先生の脳トレ本でわりと出てくる。……逆に言うと、この単語で調べても加藤先生関連でしか出てこない。


奇病っていったら失礼かもだけど、長男は確実に奇妙な人間に育っています。高校2年生になっても奇声を上げてピョンピョン飛び回っているので、幼稚園児とか小学生にとってはかなり怖いと思う。そろそろ膝を悪くするんじゃないか、って心配なくらい。
MRI脳画像診断はめっちゃ高いので調べてもらってない。でも十中八九、長男の海馬はグルングルンだと思う。角が生えたりして外見が変わるのももちろん怖い。けど見えない変化もそれはそれで別の恐ろしさがある。
ひょっとして今我々は『奇病庭園』と似たような状況にいるんじゃね? 僕なんかが子供の頃にもグレーな奴はいた。しかしこれほど多くはなかった。よくわかんないけど増えてきている、って点が似ている。さらにその境目は曖昧であり、どっちが通常か(多数か)が変わっていきそう。
少なくともあんまりにも発達障害の子供が増えたら、「定型発達」という言葉が怪しくなる。発達障害が一般的になれば、そちらが「定型発達」であり、従来の「定型発達」は異端になるのかも。幸いにして境界がスペクトラムだから対立への発展可能性は低そう?
などと今日も本の内容から発散して、あれこれ妄想できて満足。ダークファンタジー好き、著者が好き勝手書いた感満載な小説好き人におススメ。


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