『小説の小説 似鳥 鶏』は市立病とエロ広告によりおろそかになった

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個人的に懐かしい

ストーリーがメタフィクションで、テーマが悪ふざけ。キャラクターは市立っぽい人。かぶってはいないけど高校の後輩みたい。この独特なゆるさ、悪ふざけ感がなんともそれっぽい雰囲気で懐かしい気分を味わえました。

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市立病

著者は千葉出身で市立高校出身だとか。ってことは僕と同じ学校か、妹と同じ学校か。どちらもあんまり雰囲気は変わらないような気がする。基本ゆるくて、意識があんまり高くない。入学時に「市立病」とか紹介された気がする。

昔々、塾の先生が言っていた。トップの県立高校にはナンバーワンのプライドがあり、2番手にはリベンジの野心がある。それらに対して市立病にかかった学生は「まあ、こんな感じかなー」と現状満足。よく言えば楽しく、悪く言えば怠惰に過ごすらしい。「市立4年制」なんて言葉もあったな……。

あと、調子に乗って悪ふざけも大好き。文化祭でお化け屋敷をやったんだけど、窓にカーテンだけでなく、通路を段ボールで囲って遮光したらめっちゃ暗くなって雰囲気出た。そんな暗い通路でお化けがお客の手や足に触れる⇒ギャー、ってのが大変好評だった。

最初は良かったんだけど、途中からクレームが続出した。どうやら女性客の手足だけでなく、触っちゃいけない部分まで触り始めたらしい。道理でお化け役が男子に人気だったはずだ。高校生なんてたいてい悪ふざけ好きだろうけど、まあやり過ぎだよね。

そんなゆるさと悪ふざけを感じ、なんとも言えない懐かしい気分になりました。まあ卒業した後どうなったか知らないんだけどね。椎名誠が高校生の頃は血と薔薇と必殺技の学校だったらしいし、校風なんてわりと変わるかもしれない。僕がいた頃みたいにコバエが飛び回ってはいなかっただろうし。

『哀愁の町に霧が降るのだ 椎名 誠』は凄まじいエネルギーを持つ本
『哀愁の町に霧が降るのだ 椎名 誠』は僕が漠然と抱いてた小説に対するイメージを粉々に打ち砕く、凄まじいエネルギーを持つ本だった。ただただ軽薄な文章に笑い、共同生活の面白さに憧れ、たまにある感動話にいいな、と思う、そんな本だ。

まずルビに関しては目が痛くなった。その後で「そこだけ読みとばせばよかった」みたいな文章が出てくるし。名前のイメージもコロコロ並みの下ネタ。オーヘンリー短編集の「2インチばかりやり過ぎ」というセリフを思い出す。2インチどころじゃない気もするけど。

なにしろこの本はいつものように図書館で借りてきたのではなく、娘がネットで見かけて面白そうだからと買ったんだよね。どうすんのこのメタフィクション? しかもこれで読書感想文書くつもりなんだよ? まさか三十年以上経って市立病に悩まされるとは思いませんでした。

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事実は小説よりも奇なり

個人的に最も面白かったのが検閲の話。話的には政府が検閲を強化した結果、小説を書けなくなるってパターン。過去に実際あったことだし、現在進行形な国もある。これを題材とした小説も多いだろう。そんな比較的ありがちな検閲テーマに対して悪ふざけ感満載で挑んでます。

それに対して「事実は小説よりも奇なり」を地で行く「エロ広告規制法案」ニュースが最近あるよね。性的、暴力的の範囲が曖昧で拡大解釈可能らしい。以下はYahoo!ニュースだけど、わりと色んなところで見かける。面白いのが、この法案が野党発な事じゃね?

国民民主党「エロ広告規制法案」の危うさ ゲーム・アニメ・漫画への影響と懸念を整理 #エキスパートトピ(多根清史) – エキスパート – Yahoo!ニュース
国民民主党が提出した「エロ広告規制法案」が物議を醸しています。ネット広告に含まれる「青少年有害情報」につき、大規模プラットフォームに対し、閲覧防止措置の実施や、国民からの通報を受け付ける体制の整備を義

普通に考えたら検閲をするのは権力者だ。権力のある人間たち、与党が独裁のワンステップとして検閲をおこなう。メディアの力に着目して、これをうまいこと利用したのがヒトラー、的な話を聞いたことがあるけど、これを含め検閲は権力者のものってイメージじゃね? 例外あるのか知らんけど。

なんでこんなことが起きるかっていったら国民民主党の微妙な立場もあるかもだけど、やっぱり大義名分だよね。「エロ広告規制」という大義名分のもとに成り立つ構図。大義名分が権力者なわけだ。まあ本物の独裁者が表れたら大義名分なんていくらでも作り替えるんだけど。

この小説では検閲に立ち向かう小説家と、立ち向かう手法がポイントなのだから、やっぱり独裁者が検閲するって構図が必要なのだろう。だとしても本来微妙な権力しか持たないものが検閲側に回るってパターンが「事実は小説よりも奇なり」じゃね?

もっと言うと「事実は『小説の小説』よりも奇なり」だ。ただしよくよく考えれば、錦の御旗を掲げた新政府軍みたいに、大義名分による戦術・戦略は探せばわりとあるのかも。それにしたってやっぱり一般的なパターンとは異なる、面白い構図だ。NPO法人の権力が凄いことになりそう。

『リーダーは「戦略」よりも「戦術」を鍛えなさい 加来 耕三』
『リーダーは「戦略」よりも「戦術」を鍛えなさい 加来 耕三』は戦略優位という一般的認識に反する興味深いタイトルですな。なんだけど戦略と戦術の違いが気になってしょうがなく、ガッツリ読書に集中できたわけでないのですよ。ということであれこれ妄想。

さらに大義名分と言えば、直近読んだ『だいたい夫が先に死ぬ これも、アレだな 高橋 源一郎』を思い出す。陰毛の話でR18AIイラストと絡めて僕の個人的見解を書いたが、あれも大義名分だ。エロ側も、エロ規制側も大義名分を使う。なんとも面白い展開じゃね

『だいたい夫が先に死ぬ これも、アレだな 高橋 源一郎』
『だいたい夫が先に死ぬ これも、アレだな 高橋 源一郎』は本の話を枕にしたエッセイ、あるいは最近のあれこれから本の話に入っていくエッセイ、って感じ。このブログは前者の系統だと思ってるんだけど、引き出しの量が段違い。流石のひとこと。

まあぶっちゃけもっと面白い展開は、発案した国会議員たちが見たのがターゲティング広告であって、自分の閲覧履歴に関連してました、ってオチだけど、さすがにイマドキそれはないか。海外ではあったらしいけど都市伝説?

ポテンシャル的にはミステリ全般がヤバくなる可能性ある法案っぽい著者はどんな立場なんだろうね。他のミステリ作家の中には反対の声を上げている人もいる。拡大解釈されても生き残れるのは北村薫の円紫さんと私シリーズみたいな、日常の謎を扱う叙述ミステリだけじゃね?

などと今日も余計な事を考えた。市立病とエロ広告のせいで、いつにも増して内容がおろそかになった。ゆるい雰囲気と悪ふざけ好きな人におススメ。……娘の読書感想文や如何に。

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