『文学少女 林 真理子』には劣等感と欲望が詰まっていて共感できる

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*「晴耕雨読その他いろいろ」(2016/9/25)投稿記事の修正転載です

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文学少女 林 真理子(2016/9/25)

・椎名誠に似ている
主人公は作家に大切なものをすべて持っている、らしい
・世の中苦労が少なりなり共感が得にくくなっているのでは

林真理子のエッセイを読んで気になったので今度は小説を読んでみた。最近はなるべく同じ作者の本を避けているので僕にとっては珍しい事だ。

エッセイが凄く面白かった!というわけではなくその華やかな生活が魅力的で果たしてこの人はどういう経緯で今の立場に至ったか興味が出たのだ。これもまた惹かれた、というものなのだろう。

代表作の一つっぽいのでこの本を選んだのだが自伝的小説だそうだ。先日読んだエッセイに出てきた作者の生い立ちにそっくりな話が始まったので調度良い小説を借りてきたようだ。

まず第一に思った事は椎名誠に似ている。僕は椎名誠が好きで高校の頃からたくさん読んでいるので自伝的小説+エッセイ、というとまず椎名誠が思い浮かぶ。そして椎名誠に独特なSFがあるように林真理子には恋愛小説があるのでは。林真理子の恋愛小説を読んだことないが。

何となくデビューまでの経緯も似ている。椎名誠が書評誌の編集から注目されてエッセイでデビューしたのに対して林真理子はコピーライターとして注目されてエッセイでデビューしている。

おそらくどちらも出版業界とのつながりが強く影響しているのでは。別にそれは、コネだ!卑怯だ!というのではなく人間的魅力があるというか、お、面白い人だな、是非この人の書いた本を読みたいな、と思った周囲の人たちが編集者だった、という事だろう。

この辺りは出版業界の役得だ。会社員が面白い仕事をして周りに注目されると出世する。政治家でもお笑い芸人でも同じだろうが出版業界だとその業界での出世以外にこんな特典があるのだ。

で、そう思って本を読んでいるのでどこまでが実際でどこからが虚構なのかわからない。というか全て実際、という認識になってしまう。その他の本を読んでいないのでわからないがあまり同じエピソードを書いていると作者本人も区別がつかなくなのでは。

印象的な言葉としては、主人公が作家に必要なものをすべて持っている、という部分。当然僕ごときには分からないのだがおそらく劣等感、向上心、人間的面白さその他だろうか。

主人公は本屋で生まれ育ち、劣等感、とまではいかなくてもコンプレックスを抱いている。この辺りの感謝はしているけど何となく嫌ででも離れられない、という感覚が人間的で面白い。

向上心というか欲望というか、はたっぷりあるっぽい。向上心は陽性な印象を受けるが欲望っていうと陰性っぽい。主人公のそれは後者でありそこがまた良い。明るく前向きな向上心よりも暗く鬱屈した欲望の方が人間っぽい。

ただただ暗いだけだと読む気が起きないのでそれらを包み込む面白さ、ユーモアが欲しい。それはこの本の主人公よりもむしろ作者に強く備わっているのでは。

おそらく読者は劣等感と欲望に共感する。本屋でなくても、文学少女でなくても、子供が欲しくなくても、似たようなものがありそれに共感する。

そう考えると最近の読書離れは劣等感と欲望の欠如に原因の一つがあるのでは。まあ欲望は主に劣等感から生まれるのだろうが世の中苦労が少なりなり劣等感を味わう機会が全体的に少なくなっている。

劣等感も欲望もなければそれらに共感できない。共感できなければ面白くないので本を読まない。この本には劣等感と欲望が詰まっている。それらに飢えている人におススメ。

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