*「晴耕雨読その他いろいろ」2016/6/21投稿記事の修正転載です
ロスト・ケア 葉真中 顕(2016/6/21)
・色々考えてしまいミステリーどころじゃない
・ミステリーじゃない、と思ったらミステリーだった
・2回声に出して「えっ!?」って言ってしまった
ミステリーなのだがそういう問題じゃないのだよ。色々考えてしまう。色々考えてしまい真相とか割とどうでも良くなっていたのだがしっかりミステリーだった。完全に油断していたので真相が明かされた時には本気で声に出して「えっ!?」とか言ってしまった。
2回目は最後。第16回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作って見ての「えっ!?」だった。新人賞でこのレベルなの? それ以前に児童文学作家とか漫画のシナリオ協力とかしてたらしいのだが、それでも新人賞でこのレベルは凄まじい。
昔々、親の面倒は長男がみるのが当然だった。僕も長男だが果たしてどうか。余裕があれば、とは思うが義務感はない。
おそらくひと昔前なら親不孝者!と後ろ指を指されていただろう。しかし最近は珍しくない話。年老いた老夫婦が貧乏暮らししていたら、ああ、子供が面倒みてくれないんだー、と同情されるが僕らが老人になる頃にはああ、老後の蓄えもしてなかったんだー、とあきれられるだろう。
どうしてこうなったか。敗戦の負い目があり子供たちに強く言わなくなった世代、自由を求め古臭い考えは捨てる!と騒いだ世代、仕事ばかりで家庭を顧みなかった世代。色々あるだろうが色々あってどんどん世の中自由になり義務感とか社会的暗黙ルールとかは緩くなった。
若い頃に色々あって緩くした世の中を、年取ってから厳しく管理しろ!とか無理である。親の面倒を見なきゃー的義務感の欠如も自由になった、自由にした世の中の功罪の一つだろう。
後あれだ、介護のリスクが半端ない。昔なら最後の数年寝たきりでも頭はしっかり。現在は下手したら徘徊、痴呆症であり年月も長い、寿命が延びたのに健康寿命は変わらない、ってやつ。
最初は軽い気持ちで引き受けて、でも後になったらどうなるかが昔より読みにくい。っていうか不安材料が多過ぎる。晩婚化が進み定年ギリギリまで子供にお金がかかるのにおいそれと安請け合いはできない。
不安材料が、という話になるとメリットは何か?が対になる話題だが、これがない。昔なら皆農家であり長男には家、土地、田畑が相続されその引き換えとして老後の面倒をみる、ってのはわかる。明らかにギブアンドテイクだ。
しかしサラリーマンが一般的になり継ぐべき田畑もない。土地に縛られないから他の都市で暮らすことも多くなりこの場合家も土地も余程でない限り魅力が薄い。結果として介護のメリットは少なく、あっても実子側の満足感?というあやふやで不公平なものとなる。
世の中が変わってしまった。もちろん人口ピラミッドもそうだし考え方、介護の大変さ、生活の仕組み、これらが急激に変わった結果認識のズレが生じた。
自分たちの親世代がそうだったからー、は通じなくなり慌てふためく。今はまだ変化が始まってそう時間が経ってないので世間の目も同情的だが僕らの頃には違う。変化に気が付かなかったよー、では済まされない。
親の面倒を見て子供の面倒を見られない、あるいは自分たちが結局子供に面倒をかけてしまう。これではまさしくこの本に出てくる「呪い」である。親の面倒を見るため子が苦労する、一代だけならまだしもこれが末代まで続く、逆の場合にはない悲壮感があり恐ろしい負の連鎖だ。
これを断ち切るためには何を言われようが自分たちの老後の資金くらいは確保しなければならない。自己満足に浸るぜいたくはその後だ。
あれ? 何の話だっけか? この本は普通のミステリーではない。言うなれば不意打ちミステリーであり王道ではない。しかし本当に色々考えさせられる、とても良い本だ。
↓言うほど怪しくもないんだけど、戦略的に怪しさを演出している気がする。
↓唯一解なんてイマドキ流行らないのですよ。
↓もちろん同い年なのも気になるポイント。




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