『さざなみのよる 木皿 泉』の主人公が格好良すぎる|しかも美人

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*「晴耕雨読その他いろいろ」(2022/6/10)投稿記事の修正転載です

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「さざなみのよる 木皿 泉」の主人公が格好良すぎる

ストーリーが故人をしのぶ短編集で、テーマがこんにちは、さようなら。主人公が早々に亡くなって、その輪郭を浮かび上がらせるスタイルの短編集ですよ。

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主人公が出木杉君

面白くて好みだったけど難を言えば主人公格好良すぎ。いや、格好良いのは好きだよ。でもどうやら美人らしい。それはちょっとやり過ぎじゃね? サバサバ系の男らしさと美人のギャップはたしかに良い。

でもなぁ……。パーフェクト超人が出て来てもなぁ。なにしろ死んじゃってるから補正はしょうがない。それにしたって完璧すぎて主人公が登場したら解決! みたいな水戸黄門の印籠感がある。もはや神格化されている。そのうえ美人らしい。

死んじゃったら悪くは言えない。問題を起こして干された芸能人も亡くなったら特集が組まれる。いかに素晴らしくて愛されていたか涙ながらにみんなが語る。この本の主人公はプラスな影響を与えまくってるからさらに高評価だ。そのうえ美人らしい。

そういえば僕の父も言っていた。「早くに亡くなって、みんなの心の中に美しい思い出として生きるんだ……」と。亡くなったら美しい、という考えは、世の中に浸透している。

僕の父の場合、実家を担保に入れて大勝負に出て失敗して没収。しかもまったく母に相談していなかった、なんてことがあったから美しい思い出は無理だろうけど。この本の主人公はそんなことしてないからOK。そのうえ美人らしい。

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これって使えるんじゃね?

と、ここまで考えて思った。これはなかなか使えるんじゃね? っていうか使って来たんじゃね? 故人を悪く言うのと、良く言うのと、どっちがメリットが大きいだろうか? たぶん後者だと思う。なんとなく後者のほうが鷹揚で格好良く思える、という社会評価はとりあえず置いておくとしても。

もし、故人を悪く言う社会だったら? これは盛り上がるよ。絶対に話が漏れない居酒屋で上司の悪口言うようなもんだからね。会話が弾んで終電逃すよ。盛り上がる、だけどそれだけ。その先へと進まない。

改善してほしい本人は死んでるし、対策を立てようにも問題が消滅してるからいまいちやる気が出ない。 いっぽうで故人を良く言う社会は? あの人は素晴らしかった……、よし! オレも頑張るぞ! と続きやすそうだ。しかも死んじゃってるから美化し放題、改変し放題で勝手がいい。

あの人ならそんなこと言わない、あの人が前に進めと言っている、なんて本当はどうだかわからないのに都合の良いようにイメージを変えられる。この『都合の良いように』ってのがポイントじゃね? どうせ頭の中にイメージを置いとくなら優れたお手本的な人が良い。

ダメ人間を置いといて反面教師にするよりは自然だ。これはもちろん生きている人間にもいえる。誰かの悪い部分を探して嫌悪するより、良い部分を探して見習った方が良い。……いや、愚痴るのも楽しいけどね。

ナンバープレイスなんかのパズルで、「ここには1が入る」情報は「ここには1以外が入る」情報より価値が高い、ってのと似ている。反面教師の正解は不明だけど教師は正解のひとつを示してくれる。……あれ? ちょっと待てよ? ひょっとして日本と欧米で故人にたいする扱いが異なる?

などと考えだすと際限ないのでやめた。やっぱりアレだ。故人はとことん美化すべきだ。何かしら弱点がほしい、美人なのはやり過ぎ、と思うのは僕個人のしょうもないわがままでしかない。面白くて考えさせられるとても良い本でした。

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