『あなたの石　関口尚』がある種の理想的な生活を表している

＊「晴耕雨読その他いろいろ」2015/12/2投稿記事の修正転載です

あなたの石（2015/12/2）

ひと昔前の青春恋愛小説、という感じ。誰も傷つけたくない、傷つきたくないんじゃよー、みたいな。80年代後半、90年代前半っぽい？

面白くないわけじゃない。アルバイト先を舞台にして恋愛あり、友情ありだからまっとうな青春小説だ。これがアルバイトである石の話とリンクしている。フラッと一人暮らしの友人の家に遊びに行ったり、卒業を控えて現実が迫ってきたり、何だか懐かしい感じもある。

3話連続ものだが、それぞれしっかり山場があり1話ずつがちゃんとした話になっている。普通の青春恋愛小説であり好きな人は楽しめるだろう。でもなんか薄味で印象に残りにくい、普通な感じ。多分しばらくたったら忘れるだろうし、これを書かなければすぐ忘れていただろう。

べつに僕は寂しい青春時代を過ごして主人公に嫉妬しているわけでは決してない。ホントダヨ。何故か主人公の周りに可愛い女の子が現れ、不思議と主人公に思いを寄せるのが気に入らない、わけではないが気に入らない。

重ねて言うが嫉妬しているわけではない。リアリティーがないではないか。え？　そういうこと現実にあるの？　知らないの僕だけ？

トレンディードラマがオシャレで都会的な、当時の若者の理想的な生活の一つを表していたように、この話もある種の理想的な生活を表しているように思えてならない。

トレンディードラマの登場人物ほど派手好みではなく、地味だがしっかりと青春したい、できれば受動的に、俺だっていつもはおとなしいがやるときはやるよ、そう思っている層の理想的な生活ではないか。

何となく昔々な感じがするのでついついトレンディードラマなんかと比較してしまうのだが、このタイプは別に珍しくなく昔からいるし今でもたくさんいる。少年誌のラブコメ主人公は90%こんな感じであり、それだけ大きな需要があるのだろう。

純粋な人は素直に楽しんでほしい。石の話とかきれいだよ。地味目な人は期待して読んでほしい。ある種の理想がここにある。ひねくれた人は気分転換に読んでみれば？

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