『俺たちの宝島 渡辺 球』で気楽さと安定の対比が気になる

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*「晴耕雨読その他いろいろ」2015/11/6投稿記事の修正転載です

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俺たちの宝島 渡辺球(2015/11/6)

渡辺球の2作目。3つの小作品の連続になっていて、話は続いているが主人公は異なる。1作目で賞を取っている人だが、何だか文章にぎこちなさが残る印象を受けた。

最初の話はゴミの島が舞台。そこで不安定だが気楽に暮らすのと、安定しているが窮屈なのと、2つの異なる生活が出てくる。主人公もしっかりしているが敵役が見事。集団心理的に僕も同じことをしてしまうだろう。またその後もさっぱりしていて好感が持てる。

次はゴミの山が舞台。ここでも同じく気楽なのと窮屈なのと、2つの異なる生活が出てくる。主人公はよくもここまで従順な、と不思議に思うほど押しの弱い人間。周りにいたらイライラするだろう。

最後は街が舞台。窮屈な生活に焦点が当てられ、気楽な生活が浮き彫りにされる。老夫婦とチンピラの関係は出来過ぎで少々興ざめ。

全編にわたって不安定だが気楽な暮らしと、安定しているが窮屈な暮らしとの対比が主題っぽい。

でもこの問いに対して後者の生活にどっぷり浸かっている我々が前者は素晴らしい!と声高に言う事は出来ない。何のひねりもなくそう言ってしまったら嘘っぽいし、それでは小説でなくイソップ童話になってしまう。

わかっちゃいるけど後戻りのできない業というか葛藤というか、そこら辺が人間の面白みでありその描写こそが小説の醍醐味なのだと思う。

そう考えると、それぞれのお話の中で登場人物たちが悩みながらもそれぞれの答えを出していく、その過程がこの小説の見せ場だ。そして僕は最初の話が最も面白いと感じる。

↓気楽とか安定とか全部どうでもよくなってくるくらい楽しそう。

↓トレードオフはどんな世界にだってあるのですよ。

↓数年で接着剤はがれたけど思い出はプライスレス。

↓不勉強で知らないんだけどダンスを踊るようにってのは欧米では一般的な比喩なのかね?

↓処女作なのに大冒険。マジでスゲーよ。

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