『桐島、部活やめるってよ 朝井 リョウ』はトラウマえぐるから注意

02book-251108kirishima0 小説
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自分目線と親目線

ストーリーが平成版飛び出せ!青春!で、テーマが世界、キャラクターが多汗症。読んでると2つに脳が分かれる。片方は自分が高校生の頃を思い出す。もう片方は親として「桐島、とっととやめて正解だよ」って思う。一粒で二度おいしい小説。

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30年前のトラウマ

高校生+バレー、この組み合わせが今から30年以上前の僕のトラウマをえぐる。たしか高一の頃、まだクラスのそれぞれがどんな奴かよくわかってない状態でおこなわれた球技大会で、僕の種目はバレーボール。前提条件として僕の運動神経はミジンコ。

初戦の相手がめちゃくちゃサーブうまかった。多分アレはバレー部。しかも僕はレシーブしなきゃいけないポジション。無慈悲に飛んできたボールに僕は全く反応できず、さらに残酷なことにそれがコートをアウトしてた。

体育館は大歓声。相手のサーブのうまさと、コートアウトを見切って微動だにしなかった僕とに賞賛の嵐。「ナイス! よくアウトってわかったな!」とか言われた。……え? どういうこと? 反応できなかっただけなのに、アウトを確信した上級者だと思われたらしい。

そっから後はひどいもんでしたよ。どんどん僕のメッキがはがれていく。別に自分でつけたメッキじゃないので悲しい。「あいつただ下手なだけじゃね?」みたいな声が聞こえてきたのか、聞こえたような気がしたのか、ともかく空気でわかった。

それからもうひとつ、こっちは悲しいってよりもさみしい思い出。文化祭の終わり、校庭でかなりたくさんの生徒が輪になってダンスを踊っていた。オクラホマミキサーとかマイムマイムとかあんな感じ。

マイムマイムで輪が小さくなるとき、みんなが中心に駆け寄ってもみくちゃになってわいわい騒ぐわけだ。男女入り乱れて、お祭り騒ぎのフィナーレを楽しむ。これも今思えば飛び出せ青春的な思い出だよね。しかしその輪の中に僕はいない。

僕はそういうの興味ない、って顔して、坂の上からチラッと校庭を見降ろし、でも実はちょっと楽しいかもなー、誰かが誘ってくれれば、あるいは知り合いが混ざってたりしたら参加しても良いのになー、とか思いながら帰った。なんてもったいない! 今なら脳トレと称して飛び込めるのに!

そんな過去を思い出しながら読むと、ぶっちゃけこの話は美男美女ばかりで現実味に欠ける。お話的、さらには映画的にしょうがないのだろうけど、堀越学園って設定でもない限り興ざめ。カーストが出てくるわりにはガチで最下層がいないのも気になる。

何が言いたいかっていうと、今度フォークダンスの機会があったら絶対逃すまい、ってこと。もちろん脳トレ的にもそうだけど、純粋な楽しみとか思い出的にも積極的に参加したい。これがなかなか難しいんだけど、気持ちは前向きでありたい。……でももうそんなチャンスないんだけどね。

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広い方の世界へ

桐島は部活やめて正解。悪化して嫌な思いする前にとっとと損切りできたのだから大したもんだ。もちろんここが難しい。損切りかガチホか、切れば回復し、ホールドすると傷が広がる。これはもう誰にもわからないから難しい。

もったいないって思う気持ちは理解できるせっかくうまいんだから、ここまで頑張ったんだから、責任あるんだから、なんて考えがち。所有しているものが良く思える、保有効果ってやつですな。そうすると保有の正当性を支持する言い訳がどんどん浮かんでくる。

今は昔に比べるとずいぶん世界が広くて選択肢がたくさんある昔だったら学校は行って当たり前、我慢が美徳、耐えるの前提。今は不登校児が多く、我慢とか耐えるとか鼻で笑われる。我が家の息子たちはもっと学校行ってくれないと困るけど。

昔は部活やめる⇒学校に居づらい⇒引きこもり⇒詰む、だったかもだけど今は違う。部活やめたって地域の習い事、サークルとかが増えたし、そもそも楽しいことはたくさんある。学校の外でも同じことが言えそう。選択肢はどんどん増えている。

この話にも出てくるけど、サボる勇気なんて昔はめっちゃハードル高かった。それに比べて現代っ子はほいほい休む。するとさらにハードルが下がって、歯止めが効かなくなったのが今の状態なんじゃね? しばらくしたら揺り戻しがありそうな予感。

重要なのはただやめるのではなく代わりを探すってことだと思う。部活をやめるとしても、同じ趣味を続けられる方法を探すか、別の趣味を探すか、みたいな。学校行かないとしても塾とか通信教育とか自分で勉強する、あるいは興味ある世界に飛び込んでみる、的な。

こういう場合、広い方の世界を選べってアドラーが言ってた気がする。狭い方へと進んだら袋小路でした、ってパターンが一番怖い。選択肢を狭めないのが重要っぽい。いずれにせよ、何もせずぼやぼやしてたらスマホ動画見てるだけで一生終わるよ。

そんな調子で損切りするとして、その程度というかタイミングが難しい。だとしてもガチホ一択で考えるよりも、常に損切りラインを意識し、選択肢として残しておけたら運用成績も上がりそうな気がする。困るのは真面目な人、責任感が強い人ほど我慢するってことだよね。

そういう人が心を病んだりするわけだ。それにしても上記の通り学校の外はかなり広がった、仕事でも転職市場は隆盛だ。問題はオッサン。ある程度年齢がいって転職できない、子供がいてローンもあるから動けない、って人が一番ヤバい。やめるにやめられず鬱病一直線。

『桐島、仕事やめるってよ』はある程度若いうちならなんとかなりそう。しかし『桐島のオッサン、仕事やめるってよ』だとかなり悲壮だ。しかも真面目で責任感ある人が壊れるのは社会的にも損失が大きい。

この問題の解決には、市場がさらに拡大してオッサンでも転職のハードルが下がるってのに期待。そうは言ってもポンコツなオッサンはどうするか? 歳を取ればある程度のポンコツは避けられないから困る。こんな場合は自己責任、……ではなく趣味の世界に逃げたら良くね?

そんな調子で今日も余計なことを色々考えて満足。昔を思い出して、あれこれ妄想して面白かった。いっぽうでAudibleの限界も感じた。文字よりも聴く読書の方が名前覚えられず、誰が誰だかわからなくなる。今が回想なのか現実なのか、場所はどこか、等わからなくなると見返せない。

あと男性ナレーターで女の子のセリフはキツイものがある。だいたいはちょっとした違和感で済むんだけど「今日親がいないんだ」とか言われるとキツイ。ナレーターの人も困っただろうけど、聴いてる方も困る。この辺りの解決に期待。色々書いたけど、面白いですよ!

↓思い出ってのは重要要素ですなぁ。

↓取り返しがつかないってパターンには注意したい。

↓最終選択肢がこれだけど、親としては是非避けてほしい。

↓もちろん僕も痴人。

↓破壊を繰り返す主人公と時代とミノタウロスが重なって見える。

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