対比が好み
ストーリーがお母さん色々物語、テーマが「あなたは誰?」、キャラクターはお母さん。違う話が2つくっつていね? って気もするし、対比することで砂糖と塩みたいに深みを増しているとも解釈できそう。好みの問題だろうけど、僕はわりと好き。間をつなぐように別視点が入るのも納得。

想像力欠如vs記憶力減退
年齢によって感想が変わりそうな気がする。若ければ小さいお母さんに共感。僕みたいな年寄りは昔を思い出しつつ、親の立場で共感。「大人はわかってくれない」とか「子供は何もわかってない」なんてのは誰もがステレオタイプに思うことだろう。ピラミッドレベルの対立ですな。
子供の側は想像力が足りてない。「心配してくれているんだ」という発想に至らないわけだ。そういうのってわりと大きくなって、働き始めたり自分が親になったりしないとムズイっぽい。僕なんていまだにダメダメだし。
親の方は想像力……、というよりは悲しいことに記憶力の衰えが原因だろうか。好意的な言い方をすると若いころのもどかしさを覚えてはいるけど、時代の違いと相手の立場に立つという想像ができない。でもやっぱり記憶力の問題な気がする。
記憶力の方は脳トレでなんとかするとして、問題は想像力だよね。想像力が働かないと視野狭窄に陥る。本当ならこんな道もある、あんな道もある、って感じでたくさん選択肢が並んでいるのに、たった一つの道しか見えない。
これってブラック企業に縛られる社畜に似ている。はたから見たら辞めちゃえよって状況でも、道はひとつしかない。明日も会社に行って働いて怒られる、その道しか見えない。限界が来るともう一つ別の道、死んじゃうってコースが頭に浮かんで、それが甘美に思えるわけだ。怖い怖い。
などと言いつつ、多かれ少なかれ誰だってそうなんだろうね。転職すればいい、子供にあんまり構わなくていい、好きなことやればいい、などなど無数の選択肢の中からデモデモダッテで惰性の道を歩き続けるわけだ。
そこから抜け出すためには「あなたは誰?」が有効っぽい。自分は誰だっけ? 何をしたいんだっけ? 今は何に興味ある? なんて調子で折に触れて自問する。ゲシュタルト崩壊は怖いけど、たまには問い直して、好ましい道を進めているかどうか確認したい。
一億層迷子状態
もうひとつ気になったのは、親である僕らがお手本を示せてないってことだ。子供が小さいうちは良いのだよ。親は何でもできるスーパーマン。でもだんだんとそうも言っていられなくなる。学校の宿題もどんどん難しくなるし。しょうがないよ。凡人だもの。
昔だったら農民とか商人とか、親が働いている姿を見せられた。サラリーマンの最後の希望は給料袋だったけど、それも振り込みになった。親はくたびれた姿で出かけて、よくわかんないけど何かやってるらしい。親がやっていたことを理解するのは、子供が自分で働き始めてから。
家事をこなせばもうちょっと働く姿を見せられる。でもこれだって難しくて、兼業で家事をしっかりなんてめっちゃハードル高い。専業だと時間の使い方をモロ子供に見られるから、お手本にしてほしくないことまでお手本にされそう。っていうか好ましくないことほどお手本にされそう。
これらは個人個人での話だ。もっとマズいのは社会全体として方向性を示せてないんじゃね?ってこと。大昔はそもそも選択肢がなかった。農民の子は農民。諦めなんだけど方向性は明確だった。ちょっと前の日本とかだと働けば豊かになる、って方向性を素直にみんなが信じられた。
良い学校に行って、良い会社に入ってが全てではないけど、どうやらその道はわりとしっかりした道らしい。社会として同じ認識が一定数あれば、方向性が提示できる。あとは肯定するなり反抗するなり個人の勝手だよ、ってな感じで。それが昔の話であり、今は違う。
疲れた大人を見ていると、良い学校⇒良い会社コースがとんでもなくつまらなく思えてくるだろう。だってスマホを開けば面白い世界が待っているんだから。そこそこ働いて、あとはスマホで動画見てりゃいいじゃん、なんて発想になるのも当然だよね。
しかし申し訳ないことに日本はどんどん衰えていく。そこそこ働いたくらいではのんびりスマホを見ていることもできなくなるかもしれない。そもそも働く場所がないかもしれない。そんなん杞憂かもしれないけど、これまた想像力が必要だ。
さらに世の中マウント合戦に熱心だから、動画で知識を得た子供たちが舐めてかかっている節がある。マーチレベルなんて馬鹿にできないよ? コンビニ店員って大変だよ? 子供たちが現実を知ったら愕然とするだろう。
大人も大人で明確な道を示せない、っていうか知らない。僕自身教えてほしい。世の中の変化が速すぎて、いい歳した大人でも何が正解かわからない。これが正解だ!って示される道は、誰もが知ってる王道か、再現性に疑問が残る個人的成功体験、あとは詐欺くらいじゃね?
このまま行けば大人も子供も、一億総迷子状態は避けられないだろう。っていうかもうなってる? 迷子にならないためには「あなたは誰?」と自問し続けるしかない。自問しても迷うだろうけど、少なくとも問い続ければ迷子になった事実を認識できそう。
などと余計なことを色々妄想して満足。色々考えさせられる良本でした。ちょっと困ったのは、暗い話なので通勤時に聞いていると朝のやる気が減衰するっていう、タイトルに反した問題でした。なかなか朝が来ないことを覚悟して読んだ方が良いよ。
↓世の中ひょっとして想像以上にハイレベルなのでは……。
↓未知の世界って恐ろしいけど魅力的だよね。
↓無駄なものはバッサリ切りたいけど見極めが難しい。
↓今も昔も変わってないっぽい。
↓生まれたら生まれたで心配&楽しみ色々。











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