大正怪奇系曖昧ミステリィ
ストーリーが大正怪奇系曖昧ミステリィで、テーマが因習、キャラクターは特殊能力者。面白かった。面白かったんだけど、面白さにバラつきがあった気がする。これって連作の宿命みたいなもんだよね。

怪奇系って曖昧だよね
ミステリー小説がなぜ人気か? それは偉大なシャーロックホームズ先輩が、変人+凡人という鉄板スタイルを確立してくれたからだと思っています。このパターンはハズレが少なく、さらに事件前提だから言動中心で話が進みやすい。
古典ミステリーは探偵と読者に同じ情報が提示され、唯一解を作者と読者の知恵比べ的に求めるってイメージ。だけどそれも今は昔。読者に伏せられた情報あり、解は複数の中から物語として最も面白いものが採用される、ってのがイマドキ。僕は勝手に曖昧ミステリィって呼んでます。
このような曖昧ミステリィは怪奇系とバツグンに相性が良い。物理的な事件ならばさすがに無理っしょって展開も、人の心理、それも怪奇なら何でもアリじゃね? 多少違和感が残っても本人が納得しました、でオールOK。
こうなってくるとミステリーの境界線もまた果てしなく曖昧になってくる。無理があっても面白ければOK、的な。しかし変人+凡人の最強コンビと、事件ありきは残るわけだ。古くからある慣習は時として弊害を生み因習となるけど、これは物語を面白くする良いスタイルだよね。
かくして面白スタイルを備えたミステリーは他の領域に乗り出した。昔ながらの殺人事件を抜け出し、軽犯罪、日常のちょっとした不思議、グルメなどなどに広がっている。他の分野もまた、ミステリーの慣習を取り入れお話を面白くできる。ますます境界は曖昧になっていく。
これはたぶん必然的な流れだと思う。昔は小説の分野ももっと明確に分かれていた気がするけど、それぞれの好ましい部分を取り入れ、因習的に不要なものは捨てる。その繰り返しで世の中どんどん面白くなっていくんじゃね? 逆に言うと、この流れは止められない予感。
連作の宿命
因習も厄介だけど、宿命もまたややこしい問題だ。小説に限らず、連作の宿命として最初と最後が特に面白くて、面白さのバラつきが出るってのがある。最初は目新しい設定がたくさん出てくるし、最後は次々と謎が解決し、どちらも物語が大きく進むからだと思う。
子供のころ戦隊モノをみてつくづく感じた。ある時途中から見てみたら面白い。その勢いで最後まで見て満足、次のシリーズも面白いと思ったけどしばらくしたら見なくなった。シリーズの最後と最初だから面白かったってことに気づいた。
反面、面白い話の醍醐味は中間にあるとも思っている。読み進めて「ああ、後これだけしか残っていない」なんて感じて終わりが悲しくて、でも読む手を止められない。こういう本と出合えるのは幸せだよね。『竜馬がゆく』なんかで強く感じたし、挙げたらきりがない。
最初のドタバタ状態や最後の怒涛展開も良いけど、真ん中あたりの安定した部分も好き。この部分が面白いと自分の中の評価がグッと上がるよね。起承転結で言うと「承」の部分。これがまた難しいんだと思う。
この本は「起」、「転」、「結」はとても面白い。でも「承」は普通に面白いレベル。最初も最後も「まさか!」って感じで楽しめただけに、真ん中部分がちょっと残念。もちろんこの問題にはみんな苦労してるっぽい。
最近は「承」がない。音楽はサビだらけになり、物語だってのんびりしてたら飽きられる。令和はタイパ重視なのですよ。従って物語は起転々結となる。それでもやっぱり起承転結はハマれば強い。徐々に盛り上がっていく物語は、転々にはない魅力がある。
だとすれば転々でひっくり返りながら盛り上げる必要が出てくる。これもムズそうだよね。他にはノリと勢いで突っ走るパターンが考えられる。「起」で発生する事件が衝撃的だとか、登場人物の奇抜さが目を引くとかで、飽きさせない作戦。こっちの方が主流な気がする。
なんだけど「承」だって捨てたもんじゃないはずだ。だって日常系なんてのは全部「承」だよね。マンガやアニメで日常系が人気なわけだから、その雰囲気でいけるんじゃね? ……ああいうのってだいたい女子高生が登場人物だからビジュアル重視なのかもだけど。
そう考えると僕がこの本にあまりハマらなかった理由もまた、ビジュアル不足なのかもしれない。だって変人はちょっとしか出てこなくて、探偵パートはほとんど凡人+凡人なんだもん。変人成分多めの最初と最後はすごく楽しめて、真ん中らへんはそうでもなかったってことかも。
などと今日もプロの作品相手に生意気な妄想働かせて満足。最初と最後はめっちゃ面白い、真ん中も普通に面白い小説。それだけに色々考えさせられる良本でした。
余談だけど、夜目が効き鬼を見ることができる「むくろ目」に対して、暗いところで視力が極端に落ちるってだけの「烏目」はかわいそうじゃね? 「むくろ目」はサングラスやベールとかでなんとかなりそうだけど、「烏目」はただただデメリットだよね。
↓生き残る戦略が重要。多分小説家も試行錯誤してるんだろうね。
↓この本は日常が良かった。何が違うんだろうか?
↓よくわからないことはAIに聞きたいけど。でもまだ妄想系の質問は難しいっぽい。
↓一話完結型かと思ったら違った。
↓歳を取ると頑張るのがつらいのですよ。









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