*「晴耕雨読その他いろいろ」2025/5/10投稿記事の修正転載です
「レペゼン母 宇野 碧」がめっちゃ面白くて残念(2025/5/10)
ストーリーがラップバトルでテーマがラップ、キャラクターが年寄りラッパー。ラップっていうとパラッパラッパーのイメージしかない僕は完全な年寄りなんだろうね。

めっちゃ面白い
何気なく手に取ったら小説現代長編新人賞の受賞作。しかもわりと最近の2022年。僕も応募したことありますよ。ということで、見せてもらおうではないか小説現代長編新人賞の実力とやらを! ……コレめっちゃ面白いよ。デビュー作でこのレベル?
脚本とかなんか仕事で書いてたんじゃないの? ってほど面白い。次から次へと話が転がりストーリー的にも先が気になる。なによりテーマがしっかりあり、言葉ではなくストーリーで示されているのが好み。こんな面白い作品が応募されるならそりゃあ僕のは予選落ちだな。なるほど納得。
でも残念だったのは僕自身が展開を緩やかに感じたこと。もちろん僕のせいなんだけど、世の中基準で言えば、僕はわりと緩やかな展開に慣れている。本を読む方だし、動画を早送りしない。
今現在、世の中的には速い展開が好まれる。小説よりマンガ、マンガより動画。子供たちは倍速でユーチューブ見る。こち亀のネタみたいな世界だ。
最近驚いたのはユーチューブのセリフ。もはや「間」がない。文章の語尾と、次の文章の頭が重なっている動画がある。映画なんかでは間が重要であり監督や俳優はコンマ何秒にこだわる、みたいなイメージがあったんだけど現代社会において間は無駄っぽい。タイパってやつ?
この小説は面白いんだけど今風ではない。噛んだら味が出るタイプ。食べやすい方だとは思うけど味が出るまで待てない人、噛むのすら嫌な人には向かない。
そんなやつ願い下げだ! って言えれば良いのかもだけど、少なくとも職業小説家や出版社の人はそうもいかない。小説が世の中からなくなっても困るしー。もちろんこの本単体の問題ではなく小説全体の問題だと思う。
解決策の一つが東野圭吾。面白さ的に実績のある大御所なら読者も味が出るまで噛み続ける。もう一つの方法は変人を出すこと。成瀬は天下をとりにいく、みたいなパターン。ネームバリューのない新人が広く受けいれられるにはこれしかないんじゃね?
普通の小説には状況説明が必要だ。主人公はこんな状況で、息子はこんなで義理の娘は……、などなど説明していると時間がかかる。タイパ的にはどうしても下がる。
一方で変人は説明の必要がない。常識から外れているのが変人であり、常識はみんな知っているからある意味共有知識を利用できる。結果としてタイパが高い。
個人的には昔ながらパターンも好きだけど、世の中に受け入れられないならしょうがないよね。噛むまでもなく味が出る変人小説でネームバリューを付けてから、噛んで味がある小説を書く。これが良さげパターンじゃね?
……考えるだけ考えて、僕自身に実践する能力がないのが悲しいところだけど。
アクティブ読書
この本の面白さはテーマにあるよね。何しろ親子の対立なわけだよ。勝手にアフリカから連れてこられて余所者扱いされた人々、なんだかよくわからないけどいつの間にか生を受けてた子供、なんとなく境遇が似ている。そりゃ反抗もしたくなる。
ディスられた方も黙ってはいられない。文句ばっかり言ってないで自分ができることやれや! などと言いたくもなる。僕が一番気になったのもそこだ。ってことで結論を先に書くとアドラー心理学ですよ。
どうにも最近の人間はみんなタオパンパな気がする。お風呂から出たとき用のタオルとパンツとパジャマが用意されててて当然と思う人。自分では動かないお客様。さらに言えばタオパンパを準備して満足する人もいる。
それさえやってればOKと思い込み状況に応じて考えることをしない。お金を払えばOKと考えるお客様に似ている。お客様から脱却するには課題の分離が必要だと考えている。タオパンパがないと困る人間自身が準備をする。
他人の領域に勝手に踏み込まず、自分の領域に踏み込ませない。これが重要。……などと頭でわかっていても難しいんだけどね。僕だって子供たちに「後で自分が困るよ」と言って「へーきへーき」と返されても、いざ子供たちが困ってたら助けてしまう気がする。
これはもう、一度助けたら次も頼られる、後になるほど引き返しにくくなる、と思って心を鬼にするしかない。もう手遅れかもだけど。
そんな調子で、自分の考え、気になること、知識などなどのアンテナを張り巡らせアクティブに読書するとこの本はますます味が出る。タイパは悪いかもだけどアクティブ読書が今の僕のお気に入りなのですよ。噛めば噛むほど味が出るめちゃ面白な一冊でした。
↓アドラー心理学と習慣の関係が気になる今日この頃。
↓子育てってお金かかるよね。
↓頭で割り切れても結局のところはグルグル思考ですよ。
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