*「晴耕雨読その他いろいろ」2016/8/28投稿記事の修正転載です
空色バウムクーヘン 吉野 万理子
・ひょんなことから入った部活で悪戦苦闘するよくある話
・計算高く生きるか好きなように生きるか
・ストーリーとテーマが程よくマッチした名作
とても面白かったし勉強になった。この手の話はよくある。主人公が別に興味もない部活を始めることになり次の機会で絶対やめてやる!と思いながらも夢中になってしまい、最後は大団円。
部活じゃなくても仕事だったり趣味だったり考えれば考えるほどたくさんあるパターンだ。部活は名門でなく弱小、種目はなるべくマイナーでインパクトのあるものが良い。男子シンクロナイズドスイミングが最強か。
もちろんそれだけでも十分面白い話になる。主人公の気持ちの変化には相応のエピソードが必要だしそこには成長もある。
弱小、マイナーゆえの悪戦苦闘だってシリアスにもドタバタにもなる要素だ。さらに仲間との友情、さらにさらに恋愛を追加して、と、完璧な青春スポーツ友情恋愛小説が出来上がる。もちろん作者の腕前が必要だが。
おそらくこれだけでもそこそこ面白い話になっただろう。女子重量挙げはマイナーっぽいが最近ではオリンピックでも注目されてるし可愛らしい新人女優で映画化、とかされたって全然違和感ない。しかしこの話の面白さはこれに留まらない。
主人公の一家が重視する、負ける勝負はしない、人生設計をきちんと立てて行動する、っていう面白い家訓が効いているのだ。そしてそれを忠実に実践する優秀な兄弟。対して劣等生な主人公。最初の内この一家は面白い設定だなー、くらいにしか考えていなかった。
しかし違うのだよ。超重要なテーマなのだよ。計算づくを良しとする家訓に対して、お笑いだったり重量挙げだったり明らかに将来設計的に不利なことに挑戦する主人公。計画的に生きるべきか、好きな事に生きるべきか。
どっちが正しいか?なんてのはないだろうが、どちらが良いのだろう、と考えてしまう。もちろん計画的に、ってのはとても良い。しかしそれだけだと楽しくない。楽しくない事は見失う事もあるだろうし。
例えば僕は小説家になれたらなー、と思う。でも現実には会社員として働いてお給料をもらってこなければ生活できない。じゃあ高校生の頃ならどう考えたか? その頃もやっぱり小説家になれたら良いなぁ、と漠然と思っていたが、それに対して具体的に何かしていたわけではない。
でもって、小説家なんてなれるわけないしょ、一握りの才能ある人だけがなれて、さらにその中のほんの一部が生活していけるんだよ、ってのが打算的、というか一般的な考えだ。それより勉強したり役に立つ技術を身に付けて堅実に生きた方が賢い。
しかしある日思うのだ。ああ、小説家とかいいなー、と。もしも僕が全力で打ち込んで、その結果ダメだったらばまだ少しあきらめもついたのだろうがそうじゃない。現実には時間があったのに何もしなかったのだ。
おそらく好きな事を軸にして打算的にってのが良いかと。そうすれば目的を見失う事もないし無計画に時間を過ごすこともない。なんて色々考えてしまうほど大切なテーマです。そしてテーマと悪戦苦闘ストーリーのバランスが僕にとってはちょうど良かった。
人によっては不満かも知れない。もうちょっとテーマの方を掘り下げてシリアスにして欲しいって人もいるだろう。内容的には十分シリアスなのだがそれを忘れさせる独特なユーモラス感がつねにあるのだ。
ストーリーの方を重視するともっと一般受けしそうな感じになったのかも。この手の映画だと、最後はもっともっと大きな大会で奇跡的な大記録を残す、みたいなのがありそうだし。でもこの話はマイナー競技とはいえかなりリアルに進んで行く。
しかし僕にはこのバランスが絶妙だった。何というか、ああ、これが面白さのもとなのかー、ととても勉強になった。ストーリーを支えるテーマがあってそのバランスが面白さを決めるのだ。こんな変な見方しなくても面白い話でありかなりおススメ。
↓フリーライダー、フリードライバー的な部分も気になる。
↓超強烈な印象を残す存在感が凄い。
↓集中力アップ&満喫を目指せ!





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